2012年7月15日日曜日

実践!ストレイトストーリー in ハロー安曇野發動機大運転会

と相成ってのう。

とは言っても、拳銃自殺する気なぞは毛頭あるわけは無い。

73歳のストレイト(*1)氏が兄を見舞いに行くために購入した時速8kmの芝刈りトレーラに乗って540km程を旅するのに比ぶれば、実家から運転会の催される安曇野松川村までは50kmほど。しかもライガーならば、5割は芝刈り機よりも高速であろう。

なれば、ストレイト氏の約1/15の冒険が待っていてもおかしくは無かろう。
本日の大冒険に備えて、昨日のうちに、ステアリングダンパーをしっかりと固定し、新たに取り付けられたシガーソケットにはナビの電源が接続されておる。水と水筒とアミノバイタルにMP3プレーヤーとステレオスピーカを設置したならば、旅の始まりには十分な装備であろう。↑ナビ、MP3ステレオ、アミノバイタルを装備したコックピット

受付時間は7時半より9時まで。朝にも程遠い3時過ぎに起き出し、4時には出発。夏時間と言っても、周りは十分に暗く、ライガーのヘッドライトが仄かに周りを映し出す。
↑暗い中を出発、唄うヘッドライトを思い浮かべながら徐々に景色が白んでゆく

先ずは、定刻の到着を目指し、交通量の少ない19号線をひた走る。ナビでしっかり確認しながら、側線ギリギリを走り続けるのは、意外と神経を使おう。ナビに表示される速度は、10-14km/hで、上り坂だろうが、下り坂だろうが、何も変わらずに進んで行こう。

歩くよりは速く、自転車よりは遅い。このスピードで、目に入る光景はきっと歩く時の風景に近いのであろう。普通に自動車で走る時とは明らかに異なり、何気無い景色に様々な想像を脚色しながらゆったりと時と歩みが進もう。

さ て、ライガーの燃料タンクは、16リットルほどであって出発時の残量は半分少々。目的地まで辿り着けないリスクを回避するために増槽を背負っての旅路で あったが、これは将に正解であった。早朝の田舎に営業するガソリンスタンドは見当たらず、到着まで5kmほどに迫った辺りで燃料切れに見舞われてのう。

早速増槽から燃料を移して、事無きを得たが、この増槽が無かったならば、悲劇が訪れておったことは想像に難く無かろう。
↑ハンドポンプで給油

こ こまでの燃料消費率を大雑把に試算してみるなら、50kmを走って約8lほど。燃費は6km/lほどになろうか。なんと愛機Jeep並みの燃費であるの う。もっとも500kg積みの車体にて、パワーは有り余っておる故、プーリーのサイズを変え、更に低回転で走れるようにすらば、倍近くの燃費とすることは 容易かろう。

燃料を入れて走り続けると、程なく開店しておる燃料スタンドを見つけた。あと数km分の燃料があったなら、増槽を使わずに済 んだであろうが、帰りの不安を打ち消すためには、ここにて給油しておくが正解であろう。なれど、増槽への給油は出来ぬとのこと故、いったんライガーのタン クに入れた燃料を増槽に戻した上で、再度給油を依頼。空っぽになったタンクを満タンにして入った量は12.6リットル。16リットルタンクと思い込んで おったが、12リットルタンクであった様子。これでは、長旅に増槽は必須であろう。

さて、ナビに導かれ、ハロー安曇野とんぼ玉美術館の敷地に到着するなら、入り口付近の特等席には既にテーラー少年の農民車が置かれておる。ホームページに予告された通り、しっかりと持ち込んでおるのう。
↑特等席にはテーラー少年のコマツ農民車!

とんぼ玉美術館の敷地には、既に多くの發動機が並べられ、運転会の準備はほぼ整っていよう。剥き出しの古い単体エンジンがほとんどを占める中、まだまだ新 しいライガーは、一種異色の存在であるが、その珍しさも手伝ってか、食いつく人が存外に多く、何やら不思議な感触を味おうた。
滅法気に入った様子 の兄さんは、"幌を付けて北海道を旅したらきっと楽しいに違いない"と仰っておって、その場では北海道を旅するには遅過ぎようと感じたのであるが、冷静に なって考えるなら、"徒歩より速く、自転車より遅い"ライガーのスピードは北の大地の旅には、実はベストマッチであるやも知れぬ。
↑トラクタの隣にライガーを展示

幾分の振動と大きなエンジン音を友として更にはトレーラーを牽引しての旅となるならば、十分に面白味がありそうよのう。

↑良くもこれだけ集まれるものである

9時に始動式が行われ、ゆったりと回る数々のエンジン音と振動をを楽しみながら、有想夢想するのは、非日常の贅沢であろう。
↑白手袋でカッチリ始動させるなら、歓声と拍手が湧き起ころう

↑隙の無い素晴らしいエンジンレイアウトのトラクタ

↑ホンダ初の4輪車用ツインカム搭載のN360に發動機を搭載×4台

↑この車、近所に置かれていた記憶が...。

↑単発式のランマー50cm近くも飛び上がる

↑片ション状態で開けっぴろげなライガーの展示
↑ライガーの心臓部

↑お昼ご飯のお弁当(参加費の2/3はこれであろう)
↑点火コイルの変遷(引き離すだけのコイルから落下式に)

↑なんとも実用的なゆで卵製造用發動機

↑手作りの始動用スターター

やがて、閉会時間が迫り、三々五々と会場の片づけが始まる頃に、身共のライガーも帰り支度を整え帰路に着いた。
↑アルプスを左手に見ながら田園風景の中を進む

15時を暫し回った頃合で あるなら、19号線はまだまだ交通量がある筈と、白馬方面の弾丸道路に向けて農道をメインに走り始めてのう。やはり、明るいのと帰路であるならば、朝より も歩調は幾分速く感ずるのう。途中途中で、会場で一緒だったであろう發動機を荷台に据えた軽トラックに追い越されて行くのも余興名残とも言えようか。

↑ライガーにはこんな風景が良く似合おう

さて、弾丸道路に出て進み始めるも、最期の有料道路前には、追い越しの出来にくいトンネルが控えておる。ここを走るは、迷惑であろうと、ナビの指示に従 い、一山超えて回り道。着いた先には、なんと車両通行止めの橋しかないではないか。有料の大きな橋が出来たゆえ、歩道専用に変えてしもうたらしい。
↑Oh!No!

ライガーにとってこのミスコースは痛い。一山5kmのミスコースは往復10km、約1時間のタイムロスを意味する。ここまで、丁寧に短距離を選んできたが、とっぷりと日が暮れる事となってしもうた。
5時出発、8時帰宅の4時間コースとなってしもうたわい。
白馬弾丸道路に復帰し、きっと顰蹙をかいつつの観光バスを従えての長いトンネルが終わり、料金所にては、小型特殊の設定が無いらしく、軽自動車枠の料金を徴収されてしもうた。なにやら、合点がゆかぬのう。

↑平均移動速度13.4km/h、移動時間8:11、移動距離109.7kmのナビの表示(最高速度はクラッチを切った下りでの瞬間誤差値)

こうして、往復約110km、約8時間の旅路が終了した。平均時速は13.5km/hほど。定格運転での燃費は朝よりも燃料消費が少ないらしく、正確ではないものの、残燃料からの感触としては7~8km/l程の様子。これも、調子の良い時のJeep並みであろうか。乗り心地は別として、四輪駆動の最適解であるのかのう。

■.この旅にてライガーについて得られた追加情報
・キックバックの軽減にと取り付けたハイラックス用のステアリングダンパーは、程好い効果を発揮してくれるらしく、車体振動は免れぬものの、段差毎に急にハンドルを取られる事は無くなり、路肩付近も安心して走れよう。
・230g/PS・hの燃料消費率を信じるならば、燃料を満タンにして約80kmほどの無給油後続距離を実現しよう。そして、この値は、今回の旅で得た感覚にピタリ一致しよう。
・捻挫からの回復が不十分な右足にあって、ライガーのオートクルーズコントロールレバーの存在は絶大。アクセルペダルに足を置かずに、進んでいくのは相当に負荷低減されよう。ブレーキング時にオートクルーズ解除が為されるならば完璧と言えようが、残念ながらこの機能は備わっておらぬ。
・昨日設置したシガーソケットのお陰で、終始ナビとMP3プレーヤーを使用できたのは、幸いであった。運搬車と言えども電装の取り出し口は最早必須と言えよう。
・サスペンション付きキャプテンシートは、振動を軽減してくれるものの、どうやらスプリングレートが身共の体重に合っておらなんだ様子。調整用のネジが付いておるのだが、工具が無く弄れずじまい。最適化しておくならば、随分と疲労の軽減にも繋がろう。
・時短の鍵は下り坂でのクラッチワークにあり。なんとならば、クラッチを切っての重力走行の方が遥かにスピードが出るんである。空荷でなければ出来ぬ技で且つ、30km/h付近ではミッションの唸りが大きく不安となろう。20数kmならば、心地良く走れよう。法定速度は、幾分オーバー気味であるが、ナビの速度表示が何処まで信頼できるのかを考えるならば、誤差範囲であろうか。
・やはり、もう少し振動低減を図りたいのう。段差の注意を怠った代償として何度かダッシュボードに置かれたスピーカが転げ落ちてのう。しっかりと固定するなら転げ落ちたりすることは無かろうが、車軸をラバーマウントするだけでも随分と乗り心地が改善されるのでは無かろうかのう。

■農家のピンツガウアなるMovanLiger ELL801式の仕様おさらい





身共においても、その存在を知って5-6年ほどにしかならぬ、ライガーは、まだまだ認知度は低く、斯様な發動機運転会にあっても、物珍しさ故か繁々と眺める人が絶えることは無かった。随分場違いな参加であろうと気が引けておったが、結果オーライであろう。
めでとし、めでとし。

*1. 1994年にNYタイムズに掲載された実話を基に、「ツイン・ピークス」のデヴィッド・リンチ監督がユーモアとペーソス溢れるタッチで描いた感動作。アメリカ・アイオワ州ローレンスに住む73歳のガンコな老人アルヴィン・ストレイト。ある日、彼のもとに、76歳の兄が心臓発作で倒れたという知らせが入る。10年来仲違いをしていた兄に会うため、アルヴィンは周囲の反対を押し切り、たったひとりで時速8kmのトラクターに乗って旅に出ることを決意する。

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