を為すべく、手を尽くしておった。
先頃、刃先に力を入れて押し付けておったら、真っ直ぐに固定された刃先が不意に反り返ってしもうた。
以来、折畳めども、折畳めども、刃先はプラプラと拠り所無く、はみ出してしまう始末。刃先の止めも効かず、これでは、使い物にならぬと、新しいナイフを手に入れておった。
なれど、このナイフは、思い出深い品物の一つ。
手に入れたのは、高校生の修学旅行の頃であったろうか。普段まとまった懐銭など持ち歩くことも無かった当時、修学旅行の折には、小遣い銭を貰い、少々潤っておったのであろう。京の町中に、そのナイフはあった。
"ポケットにツールボックス"、おそらくは、そんなキャッチフレーズをどこぞの雑誌で読み、憧れておった気がする。この機を逃してはなるまい、と小遣い銭の大概をたたいて、手に入れた品物だ。
当時、京都くんだりまで出向きながら、土産もそこそこに、ナイフなんぞを買ってくるような輩も他にはおらなんだろう。その後、四半世紀余に渡り、文字通りポケットのツールボックスとして日々活躍しておった。そんな記憶に残る品物であれば、少々使い勝手が悪くなったからと言って、易々と捨ててしまうには惜しかろう。
壊しても元々、とも思わば、先ずは解体してみることにしてのう。
トレードマークとなる赤いシースをこじり開けると、真鍮の棒で簡単に留められているのみ。ドリルで鋲頭を削れば、バラスのに苦は無い。
↑バラしてみるなら、こんな風
折角なので、オーバーホール宜しく、積年の汚れを落とし、緩くなったばね部分を叩いたり、てこ入れしたりと復旧させるならば、ほぼほぼ、問題の緩さは解決しそうな気配。
仕上げは、リベット留めにてサンドイッチするも、使い勝手は今一つであるのう。↑リベット止めにて組上げ
↑ピンセットが緩まぬよう、少しばかり手を入れたりして組上げて完成
元の真鍮の棒はφ2.6mmであったのに対し、リベットの棒はφ2.4mm。たかだか200μmと思ったのが失敗であった。2箇所に200μmの狂いがあらば、400μmもの誤差ともなろう。意外、精密な道具であるのう。この品質が世界で愛され、四半世紀余に渡り、日々の生活で役立ってきた理由でもあるのうかのう。
少々使い勝手は悪いものの、少々気をつければ、十分に実用となれば、先ず先ずの復活ではあろう。
めでとし、めでとし。
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