に赴いてのう。
朗読コンサートなるのは、初めての体験であって、どんなものであろうかと興味を懐き、応募しておったのだが、これに当選せしめたものである。
なんでも副館長によらば、150名ほどの応募の中から50名弱が集まったそうで、約3倍の競争率であったらしい。
内容は、野田香苗さんが山本有三の書き物から幾つかの文章を抜粋して読み聞かせるというもので、そこかしこに林智子さんの手によるヘルマンハープの音色が彩りを添える。
野田香苗さんの声質は、女性版久米明とも捉えられる性質のものにして、落ち着いた声質であるものの、程好いざらつき感とでも申す引っ掛かりのあるもの。単に皇かで艶やかな声というのではなく、上質なトラックボールの如く、耳を掴んで離さぬ優れた聞こえであったのう。
なれど、ヘルマンハープの方は、どうしたことか調律が甘いのか、どうもしっくりせなんだ。微妙なウネリや僅かづつ気持ちから離れる旋律が少々気持ちの悪いものであった。
但し、このヘルマンハープの生い立ちを聞いたならば、そんなものも気にすべきことでは無いのやも知れぬ。ダウン症の子を持つ父親が我が子が楽器演奏に加われるようにとの思いで、開発した弦楽器にしてシーケンシャルコードを楽譜として用いる点は、その思想に手回しオルガンに通じるものを感ずる。楽譜がそのまま実行形式として弦上に見て取れるのは、優れたアイディアと言えよう。最早楽器の域を超え自動演奏器に手が届こうかと言う位置づけにすら思えよう。
面白味はあるのだが、身共の好みに共鳴する音色とは言えぬものであった。
いくつかの朗読の中から、印象に残った一つを紹介するも良かろう。
1.農業と文化によれば、"culture"には、既に"耕す"と意味合いを含んでおったそうな。言われてみればagricultureには、しっかりと文化の文字が入っておろう。これまで、気付かずにおったわい。種を植え、結実させてそれを食むという行為は、なるほど動物には為し難い所業であり、「農耕とは文化である」との考え方は実に的を居ていると感じた次第。
良い機会に恵まれ、めでとし、めでとし。
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